むし歯は、まず細菌と食品(とくに砂糖類)とから、歯苔(歯のまわりの汚れ)がつくられ、これがもとになって、ここから歯に対する攻撃がはじまり、やがて歯がこわされてくることからはじまります。そこで、むし歯の抑制を考える場合は、この歯苔をどうするかということになってきます。この点をふまえたうえで、図に示したようなむし歯抑制の方向づけが一応考えられます。
まず、細菌に対しては、殺菌剤などを用いて、これを殺してしまう方法も考えられていますが、これらが口の中に常在する菌であるために、現実的にはなかなか難しい方法です。そのうえ、あまりにも強力なものは口の中にとって有害なこともあるので、実用価値のあるものはありません。また、現在、むし歯のワクチンとして考えられているものは、細菌が砂糖を利用して歯苔をつくる過程を抑えようとするものですが、まだこれも実用化できる段階で 実行が可能で最も効果ある方法は、甘いものの食べ方を規律あるものとすることです。つまり、甘いものは、食べる量、食べる回数、食べる時間などを、できるだけ規則正しくし、また、食べた後は、口の中がきれいになるように、口をゆすいだり、歯をみがいたりすることです。このようなことは、とかく規律が失われ、安易に流れがちですが、できるかぎり規則正しいものとすることが大切です。とくに夜は口の中の細菌が増えるときですから、夜寝前の歯みがきは忘れないようにします。
歯苔からの攻撃を防ぐのは、何よりも歯苔を除去すること(歯みがきなど)ですが、フッ素を塗ったり、フッ素でうがいしたり、あるいは歯の溝にプラスチックをつめることなどにより、ある程度歯の抵抗性を増すこともできます。
しかし、むし歯を抑えるうえで、最も大切なことは、どのようにして歯が汚れないようにするかということであり、その要点は日常生活の規律の中にあるということを忘れないでください。